がんと向き合い生きていく

2羽のツバメは再発を心配するがん患者の心を救ったのか

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

「あなたの生きがいは?」

 そう聞かれれば、すぐに「孫」と口に出ます。それでも、なかなか会えません。孫は孫の人生があるし、成長した時、自分はきっともうお墓の中です。

 昔、古本屋で買って読んでいなかった「生きがい療法」の本を本棚から出して読んでみました。でも、心に響きません。

「死の問題から逃げずに、現実的対策に心と生き方を向けていく」「生の有限性と人生における死の意味をより深く認識することによって、生きているかぎりの期間を有意義に生きたいという意欲が高まる」などと書かれていますが、なかなか、納得というかしっくりきませんでした。

 2週間前、まだ田植えがされていない田んぼの水面に、1羽の白いサギが降りていました。

 1週間前の夕方は、急に騒がしくなってカエルの合唱が始まりました。こんなにたくさん、どこに隠れていたのかと思うほどすごい鳴き声ですが、一斉に鳴き始め、鳴き終わるのも一斉です。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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