がんと向き合い生きていく

2羽のツバメは再発を心配するがん患者の心を救ったのか

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 夜、そっと玄関前を見ると、寄り添った2羽のツバメがいました。帰るところがないのだと思いましたが、そのままにしました。

 寝床に入り、一日を振り返って、何もしなかったなと思うと、なんだか憂鬱になります。でも、今日こそはこんなことがやれたな、そう思えることがあると少し心が安らぎます。

 気持ちがツバメに向かうと、毎日心配していたお腹の痛みを感じませんでした。あれほど、「腹の中に何かある。がんの再発ではないか? 何かあるぞ」と思っていたのですが……。

 心身症、私はそうなのだろうと思います。きっと心身症、自分でも分かっているのです。でも、どうにもなりません。2羽のツバメが、私の心を救ってくれたのでしょうか?

 翌朝、目が覚めると曇っていて、今にも雨が降り出しそうです。寒い日で、ツバメの鳴き声がしません。ツバメはどうしているかと、また曇った空を見ます。思い返してみると、2羽のツバメは去年よりも痩せているようにも感じました。

 明日はどうかな。来るかな?

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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