感染症別 正しいクスリの使い方

【水ぼうそう】小児が感染したとき解熱にアスピリンを使ってはいけない

写真はイメージ
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 水ぼうそう(水痘)は、水痘・帯状疱疹ウイルスに初めて感染(初感染)したときに発症するウイルス感染症です。感染力が極めて強く、空気感染することも知られています。

 免疫がなければ感染後2週間程度の潜伏期間を経て発疹が出現します。発疹はかゆみを伴っていて、紅斑(皮膚の表面が赤くなること)から始まり、水疱、膿疱(粘度のある液体が含まれる水疱)を経て痂皮化(かさぶたになること)して治癒するとされています。

 多くの場合、数日間で治癒していくのですが、まれに細菌の2次感染や髄膜炎、小脳失調、肺炎、肝炎などの合併症を起こすケースもあります。成人や妊婦が水痘を発症した場合は、これらの合併症が起こる確率は小児よりも高くなるので注意が必要です。

 日本では小児を中心に年間約100万人が水ぼうそうに罹患していました。しかし、2014年10月から水痘ワクチンが定期接種となり、患者報告数は大きく減少しました。一方で、定期接種の機会がなかった成人の入院報告数が近年増加傾向にあります。

 水痘ワクチンは1回の接種により重症の水痘をほぼ100%予防でき、2回の接種により軽症の水痘も含めてその発症を予防できるといわれています。兄弟などワクチン未接種の接触者がいた場合には、接触から3日以内にワクチンを接種すれば、90%以上発症を阻止できることも知られています。重症化を防ぐためにも、接触から5日以内にワクチンを接種することが望ましいといえるでしょう。

 水ぼうそうの治療には、抗ウイルス薬である「アシクロビル」や「バラシクロビル」を速やかに投与することによって、発熱期間の短縮など症状の軽減が期待できます。水疱に対しては、かゆみを軽減して細菌の2次感染を防ぐことを目的に軟膏が処方されるケースが一般的です。水疱を壊さないよう優しく塗布することが大切です。

 発熱に対しては解熱剤を使用しますが、小児において「アスピリン」を使用した場合、ライ症候群の発症リスクを高めることが知られています。ライ症候群とは、インフルエンザや水ぼうそうなどのウイルス疾患に続発し、急性脳症や肝臓の脂肪浸潤を引き起こす原因不明の病態です。ライ症候群が起こることはまれですが、一度発症すると症状が重くなりやすく、死に至る例もあります。小児におけるウイルス疾患の解熱には「アセトアミノフェン」が安心して使える薬です。

荒川隆之

荒川隆之

長久堂野村病院診療支援部薬剤科科長、薬剤師。1975年、奈良県生まれ。福山大学大学院卒。広島県薬剤師会常務理事、広島県病院薬剤師会理事、日本病院薬剤師会中小病院委員会副委員長などを兼務。日本病院薬剤師会感染制御認定薬剤師、日本化学療法学会抗菌化学療法認定薬剤師といった感染症対策に関する専門資格を取得。

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