手術は日帰りでここまでできる

短時間で手術を終わらせるために患者さんの理解と協力も必要

写真はイメージ
写真はイメージ

 日帰り手術の専門院である当院は、一般的な病院より「患者さんの時間を無駄にしたくない」という思いが強い。一方、大きな病院で時間も人手もかけて入院をするのが当たり前と考えている人にとって、日帰り手術と聞いても、いまひとつピンとこない方もいるでしょう。

 そこで、日帰り手術を受けるための患者さんの準備や、手術当日の一連の流れを具体的に伝えたいと思います。

 最初の患者さんの来院で、「手術前問診」を行います。アレルギーの有無、いま服用している薬、1カ月以内に予防接種を受けた場合はその種類、過去に麻酔を受けたことがあるかないか、ある場合に何か問題があったかなどを伺います。女性の場合ですと、ピルの内服の有無も要チェック項目。服用されている方は手術前の1カ月は休薬しなくてはなりません。必要事項を確認したら、手術日を決めます。

 そして、いよいよ手術日。当日は術衣に着替えて、点滴を開始します。次に麻酔科医師の説明を受けた上で同意書にサインして手術室へ移動します。

 そこで麻酔を含め約1時間30分ほどの手術を受けるわけです。術後は水分摂取をして、痛み止めの内服薬を飲み、帰宅となります。この間、3時間ほどです。

 このように短時間で手術が行われるためには、来院される直前まで患者さんによる食事などの自己管理が必要であると前回もお伝えしました。

 ここで改めてそのことを説明しましょう。まず前日の夕食は21時までに済ませ、直前の飲食は厳禁となっています。

 もし胃の中に飲食物が停滞した状態で手術に臨むと最悪の場合、手術中や術後に嘔吐の危険があります。そして、その嘔吐は高い確率で誤嚥し、気道を介して肺に到達し肺炎となります。

 これは飲み物も同じで、コーヒーや牛乳、ジュースといったものも禁止です。ただし、水かお茶に限れば当日の早朝6時までなら可能としています。

 また、その時に薬を服用されている方も、この時間までにお願いしています。ただ血糖を下げる薬を内服(注射)されている方は絶対に服用を避けるようにお伝えしています。

 この飲食時間の制限は厳守してもらっていますが、過去にこのルールが守れずに手術が延期になったケースも実際にありました。

 皆さんが気になさるものに入浴があります。入浴する場合も、手術前に入っていただくのが好ましく、特に臍部(へそ)は綿棒を使い清潔にした方が良いでしょう。ちなみに術後は傷口に防水の保護材を貼りますので、当日と翌日はシャワーで済ませ、その後は保護材を外して入浴が可能となります。術後の抜糸は不要ですし、手術中に問題がなければ再診のための来院も不要です。

 このように患者さんの理解と協力の上に日帰り手術は成り立っているのです。

大橋直樹

大橋直樹

日本外科学会認定外科専門医、全日本病院協会認定臨床研修指導医。東京外科クリニックグループでの日帰り手術の件数は2022年4月末日時点で3101件。

関連記事