血液型と病気

「胃がん」になりやすい血液型は? 実は密接な関係がある

写真はイメージ
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 血液型は感染症だけでなく、一部のがんと密接に関係しています。とくに胃がんとの関係が、1950年代初頭から知られていました。イギリスで、3600人の胃がん患者の血液型を調べたところ、A型がかかりやすく、O型がかかりにくいことが判明したのです。

 この結果を受けて、ヨーロッパをはじめ世界中で、同様の調査研究が行われました。日本でも、1953年から55年にかけて、当時の厚生省のがん疫学研究班が全国調査を実施しており、やはりA型が胃がんにかかりやすいという結果を得ています。

 しかし各国で行われた調査研究では、結果が必ずしも一致せず、中には真逆の結果になることもありました。そのため20世紀末の時点では、胃がんと血液型は無関係か、あったとしてもA型のリスクがわずかに高い程度、と結論づけられたのです。

 結果が一致しなかったのは、研究規模が小さかった(対象者が数百人から数千人)ためだと考えられています。人数が少ないと、どうしても統計的な誤差が出てしまいます。

 さらに日本では、1971年に能見正比古氏の著書「血液型でわかる相性 伸ばす相手、こわす相手」が大ヒットし、血液型性格診断がアッという間に定着してしまいました。そのため、血液型と病気の真面目な研究が完全にタブー視されるようになり、今日に至っています。

 しかし世界的には、今世紀に入ってから状況が大きく変わっています。ヨーロッパを中心に、がん登録データベースなど医療データベースが充実してきたおかげで、コンピューターで簡単に血液型とがんの関係が割り出せるようになってきたのです。

 その代表が2010年に発表された、スウェーデンとデンマークの合同調査です。両国の献血者データベース(血液型が分かる)とがん患者データベース(胃がんにかかった人が分かる)をマッチングさせたところ、A型はO型と比べて1.2倍、胃がんになるリスクが高いことが分かったのです。ちなみにデータ解析の対象になった人数は100万人を超えていたため、この結果には誰からも異議が出ませんでした。

 その後、世界中で同様の研究が行われ、現在ではO型の胃がんリスクを1とすると、A型1.2、AB型1.2、B型1.0で、ほぼコンセンサスが得られています。つまりA型とAB型が胃がんにややかかりやすく、O型とB型は相対的にややかかりにくいというわけです。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。

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