健康長寿に役立つ高齢薬膳

【ナガイモ】「山薬」の名で生薬としても使われる食べる栄養ドリンク

ナガイモとリンゴのスイーツ
ナガイモとリンゴのスイーツ(提供写真)

 シニアにとって、しっかりと栄養を吸収するために、お腹のコンディションを整えることは重要です。

 年齢を重ねると起こしやすいのが「下痢」で、加齢によって消化吸収能力が低下することなどが原因です。シニアは体内に保持できる水分量が少ないため、下痢をすると脱水症状を起こしやすくなります。さらに、加齢に伴う食事摂取量の低下に加え、下痢で栄養吸収が悪くなると、ますます低栄養が加速してしまいます。

 中医学では、下痢は「脾」と呼ばれる臓器が関係していると考えます。脾は飲食物の消化・吸収をつかさどる臓器。その働きが低下すると慢性的な下痢や軟便を起こしやすくなります。また、脾は取り込んだ栄養を人間のエネルギー源である「気」に変えて、全身に送る役割も果たしています。いわば「生命力」の要ともいえる臓器なのです。

 生きる「土台」である脾の働きが低下すると、下痢ばかりか、疲れやすい、だるい、やる気が出ない、朝起きられないなど「体力も気力もない」状態になってしまいます。脾を力づけ、消化吸収を高める食材を取り入れて、お腹だけでなく全身のパワーアップに努めましょう。

 おすすめはナガイモ。脾の働きを強めて吸収力を高め、下痢を改善する優れた作用があります。ナガイモは気を補う代表的な食材で、中国では「山薬」の名で生薬としても使われるほど、滋養強壮、疲労回復、体力増進に効果的な「食べる栄養ドリンク」級のパワーがあります。ほかにも、胃腸虚弱、食欲増進、糖尿病、精力増強、美肌、更年期障害にも役立つとして、薬膳では頻繁に使われます。

 さらに、老化をつかさどる臓器「腎」の働きも高め、加齢によるトラブルを改善するパワーも大。ぜひ、生涯現役のために、積極的に取り入れることをおすすめします。

 ナガイモというと、千切り、とろろ以外に使い方があまり思いつかない人もいるかもしれませんが、ほぼ「ジャガイモでできることはナガイモでも可能」です。レンジで加熱してポテトサラダ風、炒めてジャーマンポテト風、肉と一緒に煮て肉じゃが風に。カレーやシチュー、スープの具としてもおいしくいただけます。

 ナガイモの下痢改善効果を高めるためには、豆類、もち米、リンゴ、ハトムギを組み合わせるのがおすすめです。

■ナガイモ高齢薬膳レシピ

ナガイモとリンゴのスイーツ


 下痢の改善に良いナガイモとリンゴ、豆類をきな粉で取り入れたお腹にやさしいスイーツ。下痢対策としてナガイモを使うときは、加熱して取り入れましょう。

【材料】
●ナガイモ  15センチ
●リンゴ  4分の1個
●ハチミツ  大さじ2
●きな粉  大さじ1
●レモン汁  少々
●クコの実  大さじ1

【作り方】
 耐熱皿にナガイモを入れてラップをし、レンジに5分かけたらスプーンなどでつぶす。そこに、いちょう切りにしたリンゴ、ハチミツ、レモン汁を加えて混ぜ合わせる。器に盛り、きな粉をふりかけて、クコの実を散らす。

池田陽子

池田陽子

薬膳アテンダント・食文化ジャーナリスト・全日本さば連合会広報担当サバジェンヌ。国立北京中医薬大学日本校(現・日本中医学院)で国際中医薬膳師資格を取得。近著「1日1つで今より良くなる ゆる薬膳。365日」が好評発売中。

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