また、装置や機器といったモノ作りには必ず企業が絡んできます。当然、企業は製品を売って利益をあげるために開発するわけですから、補助人工心臓についても利益相反が生じるのは間違いありません。ただ、補助人工心臓はそこまで大きな利益が出る領域ではないので、企業側は投資をちゅうちょする可能性も考えられます。日本の国策として「最新鋭の補助人工心臓を開発して世界中の心臓移植を待つ人たちを救う」といった志があるのなら話は変わってきますが、お家芸とされる微細な速度調節が可能なステッピングモーターの超小型化及び高度な安全性と低コスト化が実現できなければ前進しないでしょう。
こういった問題を考慮すると、補助人工心臓のさらなる進化よりも、再生医療の発展に期待するほうが現実的に捉えられているのです。近年、骨格筋芽細胞やiPS細胞の心筋シートを使って心筋を再生させる方法や、iPS細胞から心筋球という心筋細胞の塊をつくって特殊な注射針で心臓に注入するといった再生医療が日進月歩で進化しています。すでにいくつも臨床試験も始まっています。軌道に乗れば、治療費もそこまで高額にはならないとみられています。
上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」