未分化細胞であるiPS細胞は、心筋細胞に分化する過程でがん化する可能性があるなど、まだ課題が残っているのはたしかです。しかし、研究や開発に莫大な費用をつぎ込むのであれば、再生医療の方が“未来”が開けているといえます。
かつて、進行している胃がんは手術をしてがんを取り除けば食事はできるようになるけれど、結局は再発して助からないケースが多くありました。しかし、早期発見して治療すれば、患者さんの負担が少ないうえに病気を治すことができるというエビデンスが確立され、いまは生存率が大きく延びています。
心臓疾患も同じように考えることができます。たとえば、慢性心不全になりやすい人を遺伝子学的にスクリーニングして基礎疾患の病歴データなどと組み合わせ、AI検証して発症前に対策したり、早期発見して早めに再生医療を開始する。心臓の機能を落とさないようにするためには、どんな細胞をどのタイミングで使えばより早く心筋の再生を促せるのか──そうした研究と開発に注力するほうがより重要で、患者さんにとっても有益だと思うのです。
上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」