新型コロナがようやく落ち着いてきたが、その陰で地味に勢いを増している感染症がある。中でもマダニが媒介する新規感染症が、医療界で静かな注目を集めている。それが重症熱性血小板減少症候群(SFTS)だ。
発生地は中国東北部。今世紀に入ってから、出血熱の症状を呈する患者が出始め、2011年に原因ウイルスが特定され、「SFTSウイルス」と呼ばれている。感染初期は、インフルエンザに似た症状が出るが、重症化すると血液中の血小板が急激に減少する。そのため皮下や消化器粘膜から出血しやすくなり、紫斑が現れたり下血したりする。さらに重症化すると、神経症状(意識障害、痙攣など)が出て、昏睡状態に陥り、死に至る。
日本では、12年に山口県で50代女性の感染が確認された。風邪の症状に加え、脇の下のリンパ節が腫れ、手足が脱力し、白血球と血小板が著しく減少していた。入院治療の甲斐なく、4日目(発症から7日目)に出血性ショックで死亡した。死後の検査でSFTSウイルスが発見され、診断が確定したのである。