医者も知らない医学の新常識

長生きのためには1日どのくらい歩けばいいのか 米医学誌で報告

1日1万歩に根拠はない(C)日刊ゲンダイ

 歩くことが健康に良い、というのは科学的にも実証されている事実です。ただ、どのくらい歩くことが健康に最も良いのかといった点については、まだ専門家の間でも意見が一致しているとはいえません。「1日1万歩以上歩くことを目標にしましょう」というのは、広く知られている健康のための目安で、日本国内のみならず海外の歩数の基準としても使用されていました。しかし、じつはこれは日本の歩数計の宣伝が元になっていて、それほど科学的な根拠はないものだったのです。

 2021年の米国医師会関連の医学誌に発表された論文には、アメリカでの研究データが報告されています。

 38~50歳の2000人を超える一般住民を、10年以上という長期観察したところ、最も死亡するリスクが低かったのは、1日7000から9999歩歩いている人で、歩数が少ない人と比較すると、7割以上も死亡リスクが低下していました。1万歩を超える人も死亡リスクは低下していましたが、低下率はそれほど大きいものではありませんでした。

 もちろん体力をつけるためには、より長い距離を歩くことや、より強度の高い運動が必要ですが、単純に「健康で長生き」ということを考える時には、1日7000から8000歩くらい歩きましょうというのが、最も効率的な健康法であるようです。

石原藤樹

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。

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