血液型と病気

膵臓がんになりやすい血液型は? 世界中で研究報告が相次ぐ

写真はイメージ
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 血液型との関係が、もっとも顕著なのが膵臓(すいぞう)がんです。従来から膵臓がんのリスク因子として、たばこと肥満が挙がっていました。また親が膵臓がんなら、子供もかかりやすいと言われてきました。しかしそれらのみでは、リスクのごく一部しか説明できなかったのです。

 ところが2009年、アメリカの研究グループが衝撃的な論文を発表したのをきっかけに、血液型が一気に注目を集めたのでした。アメリカでは、医師や看護師など医療従事者の健康を1~2年に1度調べて、データベース化しています。これに着目してデータ解析を行ったところ、O型のリスクを「1」とすると、A型「1.32」、AB型「1.51」、B型「1.72」だったというのです。B型がもっともリスクが高く、O型と比べて2倍近く膵臓がんにかかりやすいことになります。

 この研究の対象となった人数は10万7000人(男性3万人、女性7万7000人)で、1996年からの10年間、延べ93万人に達するものでした。この間に316人が膵臓がんにかかり、その血液型をもとにリスクを計算しています。

 この論文を受けて、同様の研究が世界中で一斉に始まりました。たとえばアメリカの別の研究チームが71万人の献血者のデータを使って解析し、A型はO型と比べて膵臓がんリスクが2倍以上も高いという結果を得ています。ただしB型とAB型は人数が少なかったので、統計的に有意な結果は得られませんでした。

 イタリアなどの研究チームは、5400人の患者を対象として、O型と比べて非O型のリスクが約1.3倍という結果になりました。またドイツの別の研究では、手術患者627人を対象にしており、非O型はO型と比べて、やはり1.3倍リスクが高いとしています。

 日本でも研究が行われました。愛知県がんセンターを受診した膵臓がん患者185人を対象としたもので、B型、とりわけ遺伝子の組み合わせがBB型では、O型と比べて3倍以上リスクが高いという結果を出しています。

 現在までに発表されている数字をまとめると、膵臓がんのリスクはO型が低く、非O型が高いのは明らかで、O型のリスクを「1」とすると、非O型は「1.3~1.5程度」とされています。また非O型のうち、どの血液型がもっともリスクが高いかについては、まだ確定していませんが、B型のリスクが高いという結果が多いようです。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。

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