健康の「素朴な疑問」

Y染色体上の遺伝子が減っていずれ男性はいなくなるのは本当か

遺伝子、DNAイメージ
遺伝子、DNAイメージ

 患者さんから時々同じような質問を受けますが、それは杞憂だと思います。

 確かに、Y染色体上の遺伝子の数は現在78で、X染色体の1098に比べて少ないのは事実です。また、100万年に5個のペースで減っているというのも事実なのだと思います。だからといって、Y染色体上の遺伝子が消滅するというのは違うのではないでしょうか。

 消えたり、機能しなくなった遺伝子というのは、人類を取り巻く環境が変わり、必要なくなったからに過ぎないのではないか、と思います。しかし、人類が生き続けるために必要な生殖に関わる遺伝子が失われることはないと考えます。仮にY染色体上の遺伝子の数がさらに少なくなったとしても、精子を作るための遺伝子は残るのではないでしょうか。

 そもそもなぜ地球上の生物にオスとメス、男と女があるかといえば、地球という激しく変化する環境の下で生き抜くには多様な遺伝子の組み合わせを持つ必要があったからだと思います。単に子孫を残すだけなら、自分の体の一部を独立させて新たな個体を作る無性生殖の方がずっと良いのではないでしょうか。

 しかし、人間というどんな環境でも生き抜いていける生物には、遺伝子の多様性が必要だったのだと考えます。

 地球は寒くなったり、暑くなったり、火山が爆発して灰が空を覆ったりとさまざまな表情を見せます。人類は男と女がいるからこそ、そうした環境でも生き延びているのだと思うのです。

(弘邦医院・林雅之院長)

関連記事