アメリカの6月は「LGBTQプライド月間」です。特にLGBTQ人口が全米で最も多いニューヨークでは、街中にレインボーの旗がひるがえり、LGBTQの権利や文化を祝う様々なイベントが行われています。ところが南部の保守州では、10代のトランスジェンダーに対する医療が脅かされています。
アメリカでは若いZ世代(10代〜25歳)の2割が自分をLGBTQと考えているというデータがあり、この数字は前のミレニアル世代に比べ倍増しています。自分の本当の姿でいられる社会になってきたという流れがありつつも、こうした変化を快く思わない保守層がいるのも確かです。
南部のフロリダ州では先日、公衆衛生局長官が医療機関に対し、「10代のトランスジェンダーに対するホルモン治療や性別適合手術を行わないように」というお達しを出したことが明るみに出て大騒ぎになりました。さらに全年齢の貧困層に対し、国の保険を使ったこうした医療を禁止したために、LGBTQに対する差別と非難を浴びています。
民主党のバイデン大統領はこれに反発し、大統領令を発令して「トランスジェンダーへの医療差別を禁止する。さらには国の保険を使ってLGBTQに対する転向療法(心理的・精神的な方法で性的指向を変えようとする試み)を行うのは違法である」と宣言しました。
実はフロリダ州ではこれに先駆け、通称「“ゲイと言うな”法」が成立していました。これは小学校3年生以下のジェンダー教育を禁止し、図書館からLGBTQに関する本を撤去するというものです。幼い頃の教育が性的志向に影響するのではという親の懸念が、こうした法令に反映された形です。
実はこれはフロリダ州に限ったことではなく、アラバマ州でも同様の法律が成立、テキサス州やオハイオ州などでも同様の法案が提案されています。こうした保守共和党が優勢な州でLGBTQへの締め付けが強まり、リベラル民主党が強いニューヨークやカリフォルニアなどと強い対比を見せています。
その背景には、極端に分断した今のアメリカでは、銃規制や人口妊娠中絶問題などと同様に、LGBTQの権利も政治問題になっているという現実があります。
特に共和党の政治家にとって、LGBTQの権利の拡大を快く思わない保守層の票を集めるのに、こうした法令や措置が役に立つと考えられているからです。
ニューヨークからお届けします。