高齢者の正しいクスリとの付き合い方

この世の中に「副作用」のないクスリは存在しない

写真はイメージ

 副作用というと「悪い作用」というイメージがあるかと思いますが、じつは必ずしもそうではありません。副作用とは、「本来、目的としていたものとは別の作用」を指します。

 少しわかりづらいのでひとつ例を挙げましょう。「血圧を下げる」ことを主目的としたあるクスリを使ったところ、「心拍数も低下して頻脈も落ち着く」ケースがあります。このとき、心拍数を低下させる作用は本来の目的とは別のものであるため、副作用ということになります。実際、クスリの副作用を利用して、症状の改善を目的とするケースも少なくありません。

 副作用の中でも、体に悪影響を及ぼすものを特に「有害事象」と呼び、世間一般で副作用と認識されているものはこちらになります。今回は「有害事象」という意味で副作用という言葉を使います。

 前置きが長くなりましたが、「漢方薬には副作用がない」なんて話を耳にしたことはないでしょうか? じつはこれ、大きな間違いなのです。ずばり言います。世の中に副作用のないクスリはありません。多くの漢方薬には成分として甘草(かんぞう)が含まれており、これには体内のカリウムという成分を少なくする副作用があります。

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東敬一朗

東敬一朗

1976年、愛知県生まれの三重県育ち。摂南大学卒。金沢大学大学院修了。薬学博士。日本リハビリテーション栄養学会理事。日本臨床栄養代謝学会代議員。栄養サポートチーム専門療法士、老年薬学指導薬剤師など、栄養や高齢者の薬物療法に関する専門資格を取得。

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