名医が答える病気と体の悩み

「スマホ」の使い過ぎで認知機能が低下するのは本当なのか

脳神経内科医の永澤守氏
脳神経内科医の永澤守氏(提供写真)

 近年、長時間にわたるスマートフォンやIT機器の使用で、脳の認知機能が低下する患者さんが増えているといわれます。

「デジタル(スマホ)認知症」とも呼ばれ、症状は加齢による認知症と同様、人の名前が出てこなかったり、物忘れの頻度が高くなったりします。私のクリニックにも、3カ月に1件程度ですが、20~50代のビジネスマンが「仕事中のミスが増えた」「頭がボーッとする」などとデジタル認知症とみられる症状を疑って相談に来られます。

 現時点で、スマホやデジタル機器が認知機能を低下させることを裏付けた研究論文はありませんが、仮説は成り立ちます。

 たとえば、かつて、スタンフォード大学が「勉強しながら音楽を聴いたり、マルチタスクをすると脳に負担がかかるため、記憶力のパフォーマンスが、下がる可能性がある」と研究報告をしています。

 また、脳血流シンチ検査(脳の血流の異常を検出し、脳血管障害や認知症などの鑑定をする検査)を行っていて、スマホなどのデジタル機器を触っていると脳の血流が低下し、前頭葉に負荷がかかって脳の機能が落ちるとの報告もあります。

 前頭葉は、性格や情動(キレやすい)、意欲や自発性(やる気がおこらない、これまでやっていたことをしなくなった)、想像力・思考(考えられなくなる)をつかさどる部位なので、認知症に似た症状が出てくるのです。

 ただし、デジタル認知症は加齢による認知症とは異なるため、改善の余地はあります。物忘れが増えたり、仕事の効率が悪くなったり、自覚症状があれば、通勤時間や食事中、寝る前などスマホを使う時間を減らしてください。

 しばらく、スマホはメールチェックのみにして、情報は新聞や雑誌をはじめとしたテキストに切り替えましょう。

 また、先のスタンフォード大の研究のようにマルチタスクによるリスクが考えられます。

 音や動きのあるユーチューブのような動画コンテンツによる脳への負荷を減らすことも心がけてください。

▽永澤守(ながさわ・まもる) 2002年3月福井医科大学(現福井大学医学部)卒業。美濃市立美濃病院内科、東京さくら病院および同認知症疾患センターなどの勤務を経て、現在はかつしかキュアクリニック院長。

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