がんと向き合い生きていく

脳梗塞による左麻痺が起こった原因は隠れた膵臓がんだった

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 Bさんは、一瞬、何かの間違いではないかと思いました。

「私は左半身が麻痺しているんだ。膵臓がん? いったいなんのことだ」

 担当医の説明では、大本に膵臓がんがあり、このがんの合併症で血液の凝固能が高進し、血が固まりやすくなったことで脳血管の血栓塞栓症が起こり、左不全麻痺を起こしたというのです。Bさんも奥さんも、ただ「よろしくお願いします」と言うほかありませんでした。

■トルソー症候群と呼ばれる

 後で、Bさんが担当医から教えてもらった話では、この病態は「トルソー症候群」と言うのだそうです。脳卒中による不全麻痺と膵臓がんの2つの病気が同時に起こったのではなく、膵臓がん(他に肺がん、大腸がん、胃がんなど)で血液凝固異常が生じ、不全麻痺を招いたのです。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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