Bさんは、一瞬、何かの間違いではないかと思いました。
「私は左半身が麻痺しているんだ。膵臓がん? いったいなんのことだ」
担当医の説明では、大本に膵臓がんがあり、このがんの合併症で血液の凝固能が高進し、血が固まりやすくなったことで脳血管の血栓塞栓症が起こり、左不全麻痺を起こしたというのです。Bさんも奥さんも、ただ「よろしくお願いします」と言うほかありませんでした。
■トルソー症候群と呼ばれる
後で、Bさんが担当医から教えてもらった話では、この病態は「トルソー症候群」と言うのだそうです。脳卒中による不全麻痺と膵臓がんの2つの病気が同時に起こったのではなく、膵臓がん(他に肺がん、大腸がん、胃がんなど)で血液凝固異常が生じ、不全麻痺を招いたのです。
がんと向き合い生きていく