それから3日間、点滴治療が続きましたが、左の麻痺は変わりません。それでも、右手足を使って起き上がることはできました。また、おかゆの食事が始まったのですが、なんとなくむせる感じがあり、のみ込むのに時間がかかりました。
Bさんの膵臓がんは、肝臓にも転移していました。そして担当医からこう告げられました。
「血液凝固異常を改善するには大本のがんをやっつける必要がありますが、今の病状では手術はできません。のみ込みがもう少し良くなったら抗がん剤治療を考えますが、それともご自宅に帰りますか? 余命は短いかもしれません」
Bさんは、麻痺のリハビリをがんばって、生きていこうと覚悟していました。それが、短い命かもしれないと言われたのです。Bさんは愕然として、頭を下げたままじっとしていました。
担当医が立ち去った後、奥さんからこう言葉をかけられました。
「短い命かもしれないって言われたけど、先のことはだれにも分からないのよ。お父さん! 負けないで。一緒にがんばろう。奇跡を起こそうよ」
Bさんは「うん」とうなずきました。
がんと向き合い生きていく