同じ病気であっても、患者さんによって症例のバリエーションはさまざまです。手術は入院を伴うもの一択ではなく、日帰りが可能なケースもあり、それによって得られるメリットがあることを、国、医療関係者、一般の方全てに伝えていきたいと考えています。
具体的にやっていこうと予定しているのは次の内容です。まずは、大学病院などほかの医療機関とも連携を増やす。次に、日帰り手術が適用となる代表例が鼠径ヘルニアや虫垂炎なのですが、これらで来院した患者さんに対し初期の段階で、日帰りか、あるいは日帰りが難しい入院タイプかを見極める。
たとえば、心肺機能が悪く手術後の全身管理が手厚く必要な症例では、鼠径ヘルニア・虫垂炎といえども日帰りは難しい。早い段階で、日帰り可能な患者は日帰り手術を積極的に行っている医療機関へ、そうでない患者は重症例にも治療を施している医療機関へと紹介していくことが、結果的にスムーズな医療へとつながるはずです。
最近では、新たな分野へとチャレンジしている日帰り手術も少なくありません。そのひとつが、大腸がんです。
一般的に、がんという深刻な病気には、入院が当たり前という固定観念が一層強くあります。大腸がんの場合は比較的早期のもので、合併症のリスクが低いものに限れば日帰り可能と当院は考えていますが、この固定観念の打破は鼠径ヘルニアなどと比べるとはるかに難しいです。
小児外科に対しても、日帰り手術が取り入れられています。鼠径ヘルニアや包茎に対して行われています。
小さなお子さんの場合、まだ体格が小さいだけではなく、成長過程にあります。たとえ、鼠径ヘルニアなど大きな手術と言えないものでも、医師の選択した手術・治療によって、その後のお子さんの人生が左右される可能性があるということを考慮しなくてはいけません。
当院では、世界的に有名な小児外科専門の順天堂大学医学部主任教授の山高篤行医師を招き、2歳以上で成長発達に問題がなく、両親の理解協力が確実に得られるものに限定して行っています。
ちなみに山高先生の治療方針は「もしこの患者である子が自分の子どもならどのように診断し、どのような手術を行うか? そして術後管理はどうするかを考える」というものです。この考え方はまさに「患者本位の医療」。この考え方を大切にするなら「日帰り手術」の需要はますます広がっていくことでしょう。