医者も知らない医学の新常識

性差別の次は…「年のせい」と簡単に口にしてはいけない

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 男女を比較するような表現をしてはいけない、というのは最近では常識となりつつある考え方です。

 性別というのは医学的にはもちろん事実として存在しているのですが、性別にまつわる多くの思い込みや、偏見があることが、改めて問題となっているからです。

 性差別と比べると指摘されることがまだ少ないのですが、同様に偏見の原因として問題視されつつあるのが「年齢差別」です。これを「エイジズム」と呼んでいます。

 エイジズムというのは、「高齢者は劣っている」という思い込みのことです。性別の差別が、男性と比べて女性が劣っている、という偏見に結び付きやすいのと同じように、年齢差別では、高齢者は若い人と比べて劣っている、という偏見に結び付きやすいのです。

 今年の米国医師会関連の医学誌に、こうした年齢差別と健康との関係についての、アメリカでの研究結果が報告されています。50~80歳の2000人を超える一般住民に調査をしたところ、9割以上が何らかの年齢差別を毎日経験していて、それが多くあるほど、心身の健康状態が低下していました。

 みなさんは「年は取りたくないものだ」とか、「これだから年寄りは駄目なんだ」というような言い方を簡単に口にしていませんか? それが高齢者の健康を一番害している原因なのかもしれないのです。

石原藤樹

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。

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