痛みのない暮らしを取り戻す

星状神経節ブロックは痛み改善に加え免疫コントロールも適切にする

写真はイメージ
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 29歳の時に潰瘍性大腸炎を発症して以来、7年にわたって4度の再燃、入退院を繰り返しました。潰瘍性大腸炎とは自己免疫疾患です。

 痛みの治療を専門とする医師としての知識に加え、呼吸法、気功法などの自然療法も併せて実践した結果、これまで再燃していませんので、寛解とみてもよいかと思います。

 私自身は「完治した」くらいに考えています。

 私が発症した1990年当時、潰瘍性大腸炎の患者数は2万人程度で希少な難病でした。2007年に安倍晋三元首相がこの疾患を理由に首相を退任し、この疾患の認知度が上がりました。患者数は増加の一途をたどり、2015年には22万人に達したようです。

 つまり、1990年から2015年までの間で、患者数が11倍に増えたことになります。

 難病指定もされている潰瘍性大腸炎では、同じ自己免疫疾患である関節リウマチのように、痛みを持つ患者さんもみられます。私自身も、3回目の入院時には体のあちこちに関節痛が現れ、足関節が象の足のように腫れあがり、わずか2メートルほどの距離のトイレへの移動に2時間もかかる痛みに苦しみました。

 痛みを緩和する上で非常に有効な治療法に、「星状神経節ブロック」があります。当院の多くの患者さんも取り入れている、保険が適用される治療法です。

 頚部にある星状の交感神経節に麻酔薬を注入します。星状神経節をブロックすると、交感神経の働きのひとつである血管収縮作用が抑えられ、脳の視床下部の血流が一気によくなります。

 視床下部は私たちの自律神経、内分泌、免疫のコントロールをつかさどる部位ですから、これらが整うと痛みの改善だけでなく、免疫のコントロールも適切にできるようになります。

 星状神経節の支配領域は、左右の乳頭を結んだラインから上なので、脳だけでなく、心臓、肺、首から頭、顔面まですべての血流がよくなります。具体的には、血管の内径が2倍に、血流量は8倍に増えるとされています。

 星状神経節ブロックを取り入れて潰瘍性大腸炎の患者さんが改善しているという事実から、自律神経のバランスを整えれば、自己免疫疾患は決して治らない病気ではないと考えています。星状神経節ブロックは痛みだけでなく、生体が持つ機能を正常化することに寄与するものだと感じています。

西本真司

西本真司

医師になって34年。手術室麻酔、日赤での緊急麻酔、集中治療室、疼痛外来経験後、1996年6月から麻酔科、内科のクリニックの院長に。これまでに約5万8000回のブロックを安全に施術。自身も潰瘍性大腸炎の激痛を治療で和らげた経験があり、痛み治療の重要性を実感している。

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