健康長寿に役立つ高齢薬膳

【ココナツ】「心」の働きをサポートして落ち込んだ気分をやわらげる

ココナツ風味のエッグノック
ココナツ風味のエッグノック(提供写真)

 最近、気分がひどく落ち込む。出かけるのも、人と話すのもなんだかおっくうだし、以前のように趣味も楽しめない……。アクティブシニアを目指すなら、体の健康だけではなく、心の健康も重要です。

 シニアは体の機能低下や環境の変化によって、うつになりやすいとされています。疲れがなかなかとれない、モノが見えない、耳が遠くなったなど体のあちこちに不具合が表れると、気力の衰えにつながりがち。

 また、脳の働きが衰えることで、ちょっとした出来事でも重く受け止めるといった傾向が生じます。そのうえ、定年退職、家族や身近な人の死別や子供の独立などによる喪失感も、うつ発症の引き金になりやすいのです。

 中医学では、うつの状態は「心」とよばれる臓器と関係が深いとされています。心は血液を全身に循環させるとともに、感情などの精神活動をつかさどります。その働きが低下すると落ち込みやすい、不安感といった症状が引き起こされるのです。

 健やかな精神状態を維持するためには、心に働きかけてその機能をパワーアップし、情緒を安定させる食材を取り入れることが重要です。

 おすすめはココナツ。心の働きをサポートする優れた作用があり、落ち込んだ気分をやわらげる効果があります。不眠の改善にもおすすめです。また、心不全、不整脈など心臓のトラブル改善や予防にも威力を発揮します。

 近年、ココヤシの実を搾った「ココナツオイル」が認知症をはじめとする健康や美容によいと話題になりましたが、薬膳面においてもさまざまな効果があります。

 ココナツは人間のエネルギー源である「気」を補い、疲労回復にもよいですし、さらに「強筋骨」という効能も備えています。筋肉と骨を強化して腰痛、膝痛にも威力を発揮します。

 また、全身に水分を補うため、皮膚の乾燥にもおすすめ。さらには利尿作用によって、むくみを改善する効果もあります。一見、矛盾するようですが、ココナツは体内の「水分調節」に役立つ食材。必要な水分を体にとどめて、余分な水分は排泄するという働きがあるのです。体内の保湿と除湿をダブルで実現するという、便利な「2WAYフード」といえるでしょう。

 シニアの体と心の健康に大いに貢献するココナツ。なじみがないかもしれませんが、新たな食材にチャレンジするのも心を豊かにして脳の活性化に効果的です。ぜひ、さまざまなメニューに工夫して取り入れることをおすすめします。

 手軽なのはココナツオイルです。ココナツ特有の味と香りのあるものと、無味無臭タイプがあります。好みに合わせて使い分けましょう。

 サラダ油同様に、炒めものや揚げもの、ドレッシングなどに使えます。カレーやスープに加えてもよいでしょう。また独特の甘い風味を生かして、コーヒーや紅茶などに加えたり、トーストに塗ってもおいしくいただけます。デザートとしてナタデココを取り入れるのもおすすめです。ココナツの果汁を発酵させて作られたナタデココも、同様の効果を発揮します。

 ココナツの落ち込み改善効果を高めるには、同様に心の働きを強化するレンコン、カキ、牛乳、卵、ハチミツなどと組み合わせるとよいでしょう。

■ココナツ高齢薬膳レシピ

ココナツ風味のエッグノック

 心の働きを強めるココナツと牛乳、卵を組み合わせたドリンク。ココナツオイルの甘い香りに、ホッと癒やされるやさしい味わいです。

【材料】2人分
●ココナツオイル  大さじ2
●牛乳  2カップ
●卵の黄身  2個分
●ハチミツ  大さじ1
●クコの実  適量

【作り方】
 小鍋に牛乳、卵の黄身、ココナツオイル、ハチミツを入れて弱火で混ぜながら温める。器に注ぎ、クコの実を散らす。

新著「中年女子のゆる薬膳。」(文化出版局)が6月17日に発売。

池田陽子

池田陽子

薬膳アテンダント・食文化ジャーナリスト・全日本さば連合会広報担当サバジェンヌ。国立北京中医薬大学日本校(現・日本中医学院)で国際中医薬膳師資格を取得。近著「1日1つで今より良くなる ゆる薬膳。365日」が好評発売中。

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