60歳からの健康術

老眼は進行すれば遠くも見えなくなる 原因は水晶体と毛様体の老化にあり

老視が進むとどこにもピントは合わなくなる
老視が進むとどこにもピントは合わなくなる

 近くがぼやける、焦点が合わない。老視(老眼は俗称)は目の老化現象の代表的な症状だ。その原因は眼球の周りのピント調節の働きをする毛様体筋が衰えた結果と考えられる。さらに、レンズの働きをする水晶体の調節力が弱まったことも、もうひとつの原因だ。「自由が丘清澤眼科」(東京都目黒区)の清澤源弘院長が言う。

「水晶体はカメラのレンズにあたる働きをしています。近くを見るときは厚くなり、遠くを見るときには薄くなることで、ピント調節をしています。ところが年をとると徐々に水晶体に老廃物がたまるなどして透明度や柔軟性を失って硬くなり、近くを見るピント調節ができなくなってきます。これが老視の状態です」

 意外なことだが、ピントの調節力は人体機能の中でも最も早く老化する器官のひとつだという。健康な人の調節力は、10歳で14ジオプター(=D:角膜や水晶体の屈折力の単位。近視・遠視・乱視の強さを表す。マイナス表示は近視、プラス表示は遠視。近視の場合はマイナス3Dまでを軽度近視、マイナス6Dまでを中等度近視、それ以上を病的近視とする)、20歳で10D、30歳では7D、45歳では3D、50歳で2.5D、60歳になればほぼ1Dへと低下する。

「正視の人が眼前30センチにピントを近づけるには3Dの調節力が必要です。そのため近視用メガネを必要としなかった人は45~50歳くらいで新聞を読むのに手を伸ばすようになり、老眼鏡が欲しくなります」

 よく「近視の人は老眼になりにくい」と言われるが、それは間違い。

「近視の人はそもそも近くが見やすいために、老視の自覚が遅れるだけで年をとれば相応に近くが見えにくくなります。注意したいのは近くが見えにくいのは老視の初期症状に過ぎず、老視が進むとどこにもピントは合わせられなくなります」

 老視の最大の危険因子は年齢だが、遠視、糖尿病、心血管疾患などでは40歳未満の早期老視リスクが高まる可能性がある。その他、抗うつ薬、抗ヒスタミン薬、利尿薬なども早期老視に関連する。

 老視の治療については大まかに、老眼鏡や遠近両用コンタクトレンズ、点眼薬やサプリメント、手術の3種類が存在する。

「老視は水晶体と毛様体の老化が原因であるため、点眼薬やサプリメント、老眼鏡や遠近両用コンタクトレンズはあくまでも対症療法です。手術は老化した水晶体を人工水晶体に交換するものです。使われる人工水晶体には、従来からあった単焦点型のものと、多少でも近方を見やすく設計を改善した多焦点型のものがあります。なお、白内障と老視は別物ですが、水晶体の老化が原因であるため、同一の手術で対応できます」

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