五十肩を徹底解剖する

50歳以上の4分の1が「腱板断裂」 そのうち3分の2は痛みなし

写真はイメージ

 これは痛みや腕が上がらないなどの症状がないとき、MRIや超音波検査のみで手術適応を決める十分な根拠にはなり得ないことを示唆します。腱板断裂を指摘されてもいたずらに落ち込む必要はないのです。

 一方、別の研究では無症候性腱板断裂を5年間経過観察したところ、平均2.8年で、約半数に症状が出てきたとの報告があります。また、片側の症候性腱板断裂の約3割に、反対側に無症候性腱板断裂を認めたとの報告があります。無症状の腱板断裂でも、症状が出る前の早期発見と治療が大事なのです。

 無症候性腱板断裂は、何らかの代償により腱板断裂が存在してもそれに適応している状態と考えられます。ただし、無症状の人がどのような条件で痛みが出るようになるのか、どのような人が痛みや機能制限を生じやすいか、これらは明らかになっていません。無症候性腱板断裂であっても、時間の経過とともに断裂の大きさが進行していないか追跡する必要があると考えられます。

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安井謙二

安井謙二

東京女子医大整形外科で年間3000人超の肩関節疾患の診療と、約1500件の肩関節手術を経験する。現在は山手クリニック(東京・下北沢)など、東京、埼玉、神奈川の複数の医療機関で肩診療を行う。

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