“真夏バテ”を防ぐポイントは「冷房」「糖質」「水分」にあり

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 人間の体には「暑熱順化」という機能が備わっており、暑い日が続くと自律神経系や内分泌系の変化が起こり、体が熱を逃しやすくなる。しかし暑くなりはじめの今は、暑熱順化が出来上がっておらず、ちょっと気温が上がっただけでも暑さの影響を受けやすくなる。体調を維持するための対策は? 食の面から実践すべきことを、東京慈恵会医科大学付属病院栄養部の赤石定典氏に聞いた。

■スパイスブームは大いに活用を

 3つの点を意識することが重要だと言う。

「冷房病、糖質の取りすぎ、水分不足です」

 まずは冷房病だ。屋外と室内の温度差が大きいと、体温調節に関わる自律神経に負担がかかり、働きが乱れる。すると、疲労感、倦怠感、睡眠の質の低下などさまざまな不調が生じる。

 自律神経の乱れは、屋外と室内の温度差が5度以上あると起こりやすくなる。シャワーで済ませずぬるめのお湯にゆっくり漬かり、適度な運動を続けることも大事。

「食でも冷房病対策を講じていただきたい。冷たいものを取り過ぎないことが重要です。加えて、血流をよくする食べ物を意識して取る。ショウガ、ニンニク、唐辛子などがありますが、私が冷房病が考えられる患者さんにお勧めしているのが、スパイス料理です。スパイスをふんだんに使ったカレーは一押しです」

 スーパーなどで簡単に手に入るカレー粉には、20~30種類のスパイスが使われている。また、「ガラムマサラ」はインドの代表的なミックススパイスで、3~10種類のスパイスが配合されている。

「カレー粉やガラムマサラでカレーを作るのもいいですし、煮物や炒め物など普段の料理に一振りしてもおいしいです」

■そうめんには豚キムチ

 次に、糖質の取り過ぎについて。

 暑くて食欲があまりないときなど、つい、そうめんやざるそばなど麺類に頼ってしまう。

「これではビタミンやミネラル、タンパク質が不足してしまいます。すると糖質がエネルギーへとうまく代謝されず、疲労感、倦怠感が生じます」

 糖質をエネルギー源に変えるならビタミンB1が不可欠。疲労対策には、筋肉の原料のタンパク質も摂取しなくてはならない。

「そうめんに豚キムチをプラスするのはどうでしょう? 豚肉には脂質、タンパク質が豊富で、ビタミンB1もたくさん含まれています。キムチにはニンニクが入っており、これにはビタミンB1の吸収を良くするアリシンが含まれています。アリシンはニラや玉ネギにも多いので、炒めるときに加えてもいいですね。また、キムチは発酵食品で、この発酵によってビタミンB群が大量に増えて栄養価が増しています」

 要は、糖質の料理1品で済まさない。ワンプレートであれ小鉢を並べるのであれ、色とりどりの食材がそろったカラフルな食卓にすれば、自然とさまざまな栄養素を摂取できる。

■糖分入りの飲料は糖尿病リスクを上げる

 最後に、水分不足対策だ。

「水分不足対策は熱中症を回避するためにも、今の季節から念頭におきたい必須事項です。水分摂取はこまめにすることが基本。一度にがぶ飲みしても体内に吸収されません。また、スポーツ飲料は、屋外でスポーツをした時以外は特に必要とせず、通常の生活では水やお茶で十分です。糖分入りの飲料は、糖尿病のリスクを上げるのでNG。ビールも排尿を促すので、水分不足対策にはなりません」

 赤石氏が推奨するのは果物の活用。手軽に取れる上、ビタミン、ミネラルが豊富。ファイトケミカルという成分も含まれていて、紫外線による肌の老化、シミ、シワ、たるみ対策にもなる。

「一年中手に入れやすいキウイは皮ごと食べると栄養分を余すことなく摂取できます。手でこすり洗いし水で流せば、表面のケバケバも取れます」

 果物で太りすぎるのでは、という心配もありそうだが、大半を水分が占めているので、問題ない。もちろん、食べ過ぎなければ、だが。

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