がんと向き合い生きていく

強いストレスが急激にがんを進行させたのではないか

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

「ストレスとがんの関係」についてたずねられると、Y医師のことを思い出します。

 東日本大震災の発生(2011年3月11日)から3カ月後だったと記憶しています。被災した病院に勤務するY医師が私を訪ねてきました。

 Y医師は、津波で亡くなったご遺体の検案を毎日行い、夜はお酒を飲まないと眠れない日が続いたそうです。病院の1階は完全に破壊され、人工透析もできなくなり、悲惨な状況が続いているとのことでした。

 Y医師が私を訪ねてきた主な目的は医師派遣の依頼でした。

 Y医師はもともと頑強な体格で、この時は元気そうに見えましたが、苦労が重なってか、少し小さくなった印象を受けました。1時間ほど話して帰られましたが、それがY医師とお会いした最後でした。

 それから1年後、Y医師の訃報が届きました。スキルス胃がんで亡くなったというのです。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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