がんと向き合い生きていく

強いストレスが急激にがんを進行させたのではないか

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 私は愕然としました。考えてみれば、お会いした時、Y医師の胃にはすでにがんができていたのでしょう。あれから、体調がすぐれないことがあっても、検査する暇もなかったのではないでしょうか。そして、あの大震災のストレスが、急激にY医師のがんを進行させたのではないかと思いました。

■楽観的な人は進行が遅いとの報告も

 がんと診断された初期の段階から心理的なサポートを受けた場合、再発のリスクや死亡率が減少したという報告があります。また、肺がんで緩和的な心のケアを受けた場合は、そのようなケアを受けなかった場合よりも生存率が良くなったという研究データもあります。悲観的な人よりも、楽観的な明るい性格の人のほうが、がんの進行が遅いという説もあります。

 がんの原因に、ストレスを挙げる方がいますが、ストレスががんを発生させるかどうかは分かりません。がんの発生の多くは遺伝子異常が突然起こってしまうことによります。平均寿命が延び、高齢になって免疫能が下がり、がんになる人は増えています。長く生きていれば2人に1人ががんになる時代です。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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