医者も知らない医学の新常識

吐き気止めには脳梗塞の危険がある?リスクは通常の3倍以上

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 脳梗塞は脳の血管が何らかの原因で詰まってしまうことにより起こります。その原因で最も多いのは血管が老化する動脈硬化ですが、血管に生まれつき弱い場所があったり、傷がついて炎症が起こったりすると、若い年齢でも脳梗塞になることがあります。年齢が若いからと、油断をするのは禁物なのです。

 脳に影響を与える薬の一部は、脳梗塞の危険性を高めることが知られています。その代表は抗精神病薬という薬で、脳のドーパミンというホルモンを低下させることが、その原因ではないかと考えられています。そこで問題となるのは、同じようにドーパミンを低下させる作用を持つ、吐き気止めの薬の影響です。抗精神病薬は特殊な病気の場合のみ使用される薬ですが、吐き気止めは誰でも気軽に飲むことのできる薬なので、よりその影響は大きいと考えられるからです。

 今年の「ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル」という一流の医学誌に、フランスでの研究結果が報告されています。それによると、吐き気止めの使用は、その後2週間の脳梗塞の危険性を3倍以上増加させていました。その影響は、脳に移行しやすい薬剤でより強くなっていました。

 脳梗塞のリスクを高めることが分かっている、高血圧などの持病のある方は、吐き気止めの使用には注意をした方がよさそうです。

石原藤樹

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。

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