加齢に伴って悩ましさが増す「お尻の問題」。年齢を重ねると、便秘や下痢によって肛門に負担がかかりがち。そのため、痔(じ)になりやすくなってしまうのです。
シニアに多いのは「いぼ痔(痔核)」です。肛門周辺には、筋繊維や結合組織、動脈、静脈が網の目のようになった“肛門クッション”があり、便やガスが漏れるのを防ぐ役割を果たしています。便秘の場合は排便の際にいきみすぎ、下痢であれば便が勢いよく出ることで肛門に圧力がかかります。その結果、肛門クッションがうっ血し、腫れて、いぼ状に盛り上がってしまうのです。初期の段階では痛みがなくても、悪化すると耐えられないほどの激痛を伴い、排便に影響が出るため注意が必要です。
中医学では、痔は「血」の巡りの悪さにあると考えます。全身の血の流れが滞った結果、肛門周辺の血流も悪くなってしまうのです。血が滞ると、慢性的な肩こり、関節痛、目の下のクマがひどい、打ち身やあざができやすいといったトラブルも見られがち。快適なお尻ライフのためには、血行促進食材を取り入れることが大切です。
おすすめは黒キクラゲ。血を巡らせる効果が高いうえに、便秘と下痢の改善にも役立つという、まさに「お尻の守り神」のような食材です。
黒キクラゲというと、なんとなく八宝菜の中にいた……中華の炒めものにまぎれていた……といった脇役のイメージがあるかもしれませんが、薬膳ではとても重要視されています。血の巡りをよくするとともに、血を補う作用もあるという「ダブルのパワー」を兼ね備えているのです。また、老化をつかさどる「腎」の働きを高め、加齢に伴うトラブル撃退に威力を発揮。体内の老廃物を排泄(はいせつ)する働きにも優れています。ほかにも、喉のトラブル、血便、不正出血、腫れものの改善にも役立ちます。黒キクラゲは「キノコ」です。中華だけでなく、和食、洋食に使ってもおいしくいただけます。味噌汁、カレー、パスタなどさまざまな料理に積極的に使うことをおすすめします。
黒キクラゲの痔を改善する効果をさらに高めるには、ナスや黒豆と組み合わせると効果的。また、人間のエネルギー源である「気」が不足していると、痔核が飛び出しやすくなります。気を補う卵、ブロッコリー、ナガイモなども取り入れるとよいでしょう。
■黒キクラゲ高齢薬膳レシピ
黒キクラゲとナスのミートソース丼
血行を促進して痔の改善によい黒キクラゲとナス、痔核飛び出し対策によい卵を組み合わせたレシピ。市販のミートソースを使って手軽に完成します。とろっとしたナス、コリコリのキクラゲに卵がからんで、ごはんがすすむおいしさに。
【材料】2人分
●黒キクラゲ(乾燥) 8グラム
●ナス 2本
●ミートソース(市販品) 200グラム
●ごはん 丼2杯
●卵の黄身 2個分
●オリーブオイル、粉チーズ、塩・コショウ 適量
【作り方】
フライパンでオリーブオイルを熱し、小さめのひと口大に切ったナス、水で戻して食べやすく切った黒キクラゲを入れて炒める。火が通ったら、塩・コショウをしてミートソースを加え3分煮て、丼に盛ったごはんの上にかける。卵の黄身をのせ、粉チーズを振る。
新著「中年女子のゆる薬膳。」(文化出版局)が6月17日に発売。
健康長寿に役立つ高齢薬膳