60歳からの健康術

40歳以上の半数が目の不調を自覚 「眼精疲労」をどうするか

写真はイメージ
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 年をとると体のあちこちの疲れが出やすくなる。目も同じだ。いわゆる「眼精疲労」も多くなる。どうすればいいのか? 「自由が丘清澤眼科」(東京都目黒区)の清澤源弘院長に聞いた。

「日本眼科啓発会議の2021年調査によると40歳以上の47.7%が目に不調を訴えていて、目の疲れ、小さい文字の見にくさ、肩こり・頭痛など直接眼精疲労につながる症状は多いそうです。しかし目の健康維持に努めている人は26.1%と少ないといわれています」

 眼精疲労とは、目を使う作業を続けることにより、眼痛や目のかすみ、まぶしさ・充血などの眼症状のほか、頭痛・肩こり・吐き気などの全身症状が出現し、休息や睡眠をとっても十分回復し得ない状況のこと。原因としては、ドライアイなどの目の病気のほかに、度数の合わない眼鏡の使用が挙げられるという。

「自分に合っていない眼鏡をかけることで目が疲れると訴える人は少なくありません。適切な眼鏡合わせがなされないと、①毛様体への負荷の増大、②画像コントラストの劣化、③眼周囲筋の緊張で、眼精疲労が蓄積します。眼精疲労は①老眼鏡を作らない人、②既製品の老眼鏡でごまかす人、③変形した眼鏡を使用する人、④左右各目の異常や斜視に対応しない眼鏡を使う人、⑤細かすぎる作業やスマホの使い過ぎをする人などに発生します。対処法は目に合った眼鏡の作製、作業距離と眼鏡焦点距離の一致。適度の休憩、40センチ程度の作業距離を保つ、適切な明るさの下で作業をするなどです」

 眼精疲労の原因にはドライアイも多く、眼科患者の約2割、1200万人以上がドライアイだという。ドライアイは涙液層の安定性が低下する疾患で、VDT作業者(液晶などの画面表示機器と、キーボード、マウスなどの入力機器で構成される端末を使う作業を行う人)の約66%にドライアイ症状がある。

「ドライアイは目のかすみや疲れといった機能異常を伴い、目表面の涙液層が不安定で涙がいつものようにレンズの役目を果たせず、眼精疲労を起こします。コロナ禍ではマスク使用に伴う目への息の吹き付けによる『マスクドライアイ』も増えていました」

 赤ちゃんの涙は、大人に比べて飽和脂肪酸やタンパク質を多く含んでいる。そのため大人に比べてまばたきが少ないことがわかっている。

「逆に大人はしっかりとしたまばたきが必要です。まばたきは涙腺から水分を、マイボーム腺から油を出し、また涙を目表面に均一に広げるとともに老廃物を洗い流す働きもするからです。加齢などの原因でマイボーム腺が萎縮すれば、目表面の油は不足し水分の蒸発が過剰となって、ドライアイが進行して眼精疲労を招きます。対策としては、デジタル画面を20分見るごとに、20フィート(6メートル)先を20秒見るという『20-20-20ルール』が米国では推奨されていますが、これを真似るのもよいでしょう」

 眼精疲労に心当たりがある人は、早めに眼科専門医を訪ねることだ。

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