夏は自律神経が疲弊しやすい。今年はすでに厳しい暑さに見舞われ、これからさらなる酷暑が予想されている。なるべく自律神経に負担をかけないように乗り切りたい。東京疲労・睡眠クリニック院長の梶本修身氏に聞いた。
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自律神経は、体温、血圧、呼吸、心拍数、消化吸収、睡眠、摂食など、ヒトが生命を維持するために必要な働きをすべてコントロールしている。活動時や昼間に活発になる「交感神経」と、安静時や夜に活発になる「副交感神経」の2つの神経系統で成り立っている。
「気温が高い夏は、体温を一定に保つために自律神経が酷使されます。体内の熱を放散するため、発汗を促したり、体表の血管を拡張して血流を増やします。室内と屋外の温度差、強烈な紫外線、暑さによる睡眠不足なども自律神経に負担をかける要因になります」
自律神経が疲れ果て、交感神経と副交感神経のバランスが崩れてしまうと、胃腸の不調、便秘や下痢、食欲不振、頭痛、めまい、抑うつ、不眠、慢性疲労、倦怠感、動悸など、心身のさまざまな不調を引き起こす。さらにそのまま放置していると、寿命を縮める危険があるという。
「自律神経の疲弊が継続したままの状態になると、自律神経系だけでは生命維持のための機能をコントロールすることができなくなってしまいます。そうなると、それを補うために内分泌系や免疫系が稼働するので、インスリン抵抗性が表れたり、血圧が高くなったり、肥満を招きます。その結果、糖尿病、脂質異常症、高血圧、心血管疾患、がんといった命に関わる病気の発症リスクがアップしてしまうのです」
ただでさえ自律神経に負担がかかる夏は、できる限り負荷を減らす生活を心がけたい。ポイントを解説してもらった。
①室温
自律神経中枢は脳にある。脳は発熱量が多いため常に冷却が必要で、うまく冷やせないと自律神経に負担がかかる。
「脳=自律神経中枢を冷やすために重要なのは、鼻から冷えた空気を吸うことです。鼻腔の奥には脳とつながっている毛細血管がたくさん通っていて、鼻呼吸で冷たい空気を通過させれば、熱交換によって脳を冷やすことができます。脳にとっては気温22.5度から23度が最も快適だとされているので、エアコンの設定温度は24度くらいにするのが良い。ただ、日本人の体格を考慮すると24度設定では体が冷えすぎてしまうので、カーディガンなどを1枚羽織ったり、就寝時は厚手の掛け布団で眠るのがおすすめです」
②サングラス
強い紫外線はDNAを破壊してしまうので、動物にとっては大敵となる。そのため、紫外線を浴びると体は“臨戦態勢”をとる。メラニンを作って肌を黒くするのもその一例で、紫外線から体を防御するために自律神経はフル回転を強いられる。
「とりわけ、目に紫外線を浴びると角膜がダメージを受けて炎症が起こり、自律神経の負担も増大します。目を紫外線に直接さらさないようにするのが大切で、外出時は紫外線をカットするサングラスをかけるようにしてください。隙間から紫外線が入り込まないように大きめのフレームで側面をカバーするタイプがいいでしょう」
③昼寝
日の出の時刻が早い夏は、それだけ朝早くから光を浴びることになるため、睡眠時間が短くなり質も低下する。
「夏の睡眠時間は冬に比べて25分ほど短くなるというデータがあります。自律神経の負担を減らしリセットするには何より睡眠が重要で、夏は夜の睡眠不足を補うために昼寝をするのが理想的です。交感神経から副交感神経への切り替えは“寝落ち”を除いて5分程度かかるのが通常です。また、昼間に30分以上寝てしまうと夜の睡眠に悪影響を与えます。ですから、10~25分くらいの昼寝をするのが望ましいです」
④入浴
「熱い湯につかると体温が上昇するうえ、高温多湿の浴室内では呼吸で脳を冷やすことも難しい。入浴は自律神経を酷使する環境といえるので夏は湯船にはつからず短時間のシャワーだけで済ませるようにしてください」
⑤運動
運動はただでさえ自律神経に負担をかける。体温、脈拍、心拍数、血圧、呼吸などを整える必要があるからだ。
「普通に生活しているだけで自律神経に負担がかかる夏は、運動量を減らすことが大切です。普段からジョギングやウオーキングをしている人はいつもよりも距離や時間を短くするなど、意識的に負荷を軽くしましょう」