一方、認知症の場合、脳全体の機能が落ちていきますし、進行は止められません。
高齢者のうつ病と認知症にはそれぞれの見分け方があります。
うつ病の大半は、配偶者の死や投資の失敗など大きなきっかけがあります。患者さんは物忘れのほか、不眠や食欲低下など体の不調を訴えます。また、脳自体の機能が落ちているわけではないので、たとえば、人物名を忘れたとしても、家族が時間をかけてヒントを与えれば答えられます。お金をなくした場合も、落ち込んだり、自分が管理できなかったからだと自責の念に駆られるのが特徴です。
対して認知症は、特にきっかけはありません。物忘れなどの記憶障害が起きてきますが、物忘れ自体を否定します。「今日は買い物に行く日だ」と伝えても、「知らない。聞いていない」という具合です。脳の機能が落ちているので、喜怒哀楽の感情も薄れ、物事に興味を示さなくなったり、お金がなくなれば「あいつに取られた」と怒り出します。他責思考になります。
名医が答える病気と体の悩み