がんと向き合い生きていく

同じがん、同じステージなのに…なぜ自分だけが再発したのか

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 Rさんが手術を受ける際の入院中、Fさん(45歳)という男性が同室でした。Fさんは、同じ胃がん、同じステージ2で、Rさんよりも1週間前に手術を受けていました。担当医は違っていましたが、同じ“胃グループ”の医師でした。入院中は数日一緒で、お互いに「同病相哀れむ」などと冗談を言い合って親しくなりました。Fさんも「再発することはないだろう」と言われていて、同じ抗がん剤を1年間、内服することになっていました。

 Rさんは、手術後は体調も順調に良くなってきていたのですが、抗がん剤を始めてから、なんとなくむかむかする、不快な感じがありました。Fさんに電話で聞いてみると「同じ」とのことだったので、少し安心しました。なにしろRさんにとって、Fさんは“1週間先輩”です。なにかにつけ、相談できることを心強く思っていました。

 5カ月後の外来でも、Rさんは担当医から「手術は完璧だったし、きっと再発はないと思う。それでも1年間続けてみましょう」と言われました。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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