コロナ感染者の10%に後遺症…「だるさ」「胃酸逆流」がリスクを上げる

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 コロナ回復後も症状が継続するコロナの後遺症。前回に続き、知っておくべきことをヒラハタクリニック(東京・渋谷)の平畑光一院長に聞いた。

■コロナ自体は軽症。それでも後遺症が出る?

「軽症、または無症状だから大丈夫、というのは一切ありません。イギリスの51万人の感染者を対象にしたデータでは、コロナの症状が軽い方が倦怠感の後遺症が出やすいと報告されています」

■原因は?

「免疫システムが自身の細胞を攻撃する自己免疫反応や血管内皮の炎症、血管内に無数にできた小さい血栓などが指摘されています」

■症状は?

「最も多いのが、日常生活を送るのが困難になるほどの倦怠感。気分の落ち込み、ブレーンフォグ、頭痛、息苦しさ、体の痛み、不眠、動悸、食欲不振、味覚・嗅覚障害、脱毛、咳など、200以上の症状が挙げられています。なお、ブレーンフォグとは、頭の機能が落ちること。簡単に言えば2日くらい徹夜した後ぐらいの頭の感じで、文章は読めるけど意味が理解できない、なかなか覚えられない、など」

■後遺症はどう判断?

「無症状や軽症でも後遺症が出る場合があるので、必ずしも検査でコロナ陽性が確認されていない方もいるでしょう。コロナの症状は風邪と酷似しています。無症状の場合は後遺症かどうかの判断は困難ですが、風邪のような症状が出た後、不調が継続しているようなら後遺症を疑ってもいいかもしれません」

■感染経験あり。今後後遺症が出ることも?

「ほとんどの方は、感染時から何らかの症状があり、回復後も継続している。また、感染後2カ月以内に後遺症の重症化が起こっている。コロナ回復で症状が全てなくなり、ずっと問題ないなら今後、後遺症が出る率は低いでしょう」

■後遺症の予防策は?

「簡単な方法がひとつあります。鼻の奥で炎症が起こっていると後遺症が出やすいことがわかっており、その部分のケアをすると後遺症が出にくくなると考えられます。塩分濃度1~2%の生理食塩水を片方の鼻から入れ、もう片方の鼻から出す鼻うがいをお勧めします。また、回復後2カ月間は通勤をやめて在宅勤務にするなど、だるくなる行動を徹底して避ける。胃酸が逆流すると鼻の奥の炎症が悪化するので、胃酸逆流が起こりやすいことはしない。具体的には、寝る1時間前は水を飲まない、寝る3時間前は食事をしない、腰から上が斜めに持ち上がるように寝具を工夫する、油物・甘い物・炭酸・カフェインは取らない、ベルトや猫背の姿勢などでお腹に圧をかけない」

■体力を取り戻すために散歩……はダメ?

「疲れを感じるようなら絶対にやめてください。繰り返すうちに非常に強い倦怠感に襲われるリスクがあります。そのまま寝たきり状態になる方を何例も見てきました」

■治療法は?

「だるさを避ける・胃酸逆流を起こさないといった生活の指導、鼻うがい、鼻の奥の炎症を取る上咽頭擦過療法、鍼灸、漢方薬などです」

■治る?

「フランスの調査では、1年間で完全に後遺症が消えた人は15%。85%は1年経っても完璧に症状が消えない。だから、後遺症が出たら、治癒や寛解を目指すのではなく、症状のコントロール法を身につけていきましょうと患者さんに伝えています。当院で寝たきり、または寝たきりに近い方も7割は改善が見られている。治癒しなくても、改善はする。決して希望を捨てないでほしい」

■ワクチン接種3回で後遺症にならない?

「3回接種しても、後遺症になることはあります。しかし、感染しなければ後遺症は出ない。感染対策のためにワクチン接種は有効と考えています」

 イギリスの国家統計局の報告によれば、感染者の10%に後遺症が見られるという。注意するに越したことはない。

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