ワクチン接種後に亡くなった91歳女性に初の死亡一時金 なぜ認められたのか?

新型コロナワクチンを接種する医療従事者の女性(C)共同通信社
新型コロナワクチンを接種する医療従事者の女性(C)共同通信社

 新型コロナワクチンの健康被害を審査する厚労省の「疾病・障害認定審査会感染症・予防接種審査分科会」は25日、接種後に死亡した91歳の女性について、初めて死亡一時金の請求を認めた。女性の遺族は、予防接種法に基づき死亡一時金と葬祭料を請求していたが、それぞれ4420万円と21万2000円が国から支払われることとなった。今回の認定をキッカケに死亡一時金の支払い事例は増えるのか。

 新型コロナワクチン接種がスタートして7月27日で1年5カ月余り。この間、2.9億回を超えるワクチン接種が行われ、厚労省には医療機関からだけでも3万4120件(6月12日まで)の副反応疑いと1770件の接種後死亡件数(6月24日まで)が報告されている。

 にもかかわらず、同分科会が新型コロナワクチンの接種後の健康被害を認めたのは昨年8月19日の29人が初めてだった。それも医療費と医療手当の請求についてで接種後死亡の請求は1件も認めてこなかった。それどころか、最近の同分科会では接種後死亡の請求の審議もなかった。

 6月23日開催の同分科会では審議された61件の請求すべてが医療費・医療手当で、認定は56件、否認3件、保留2件。接種後死亡の一時金請求の審査はゼロ。

 その前の6月2日の同分科会での審査も67件すべてが医療費・医療手当の請求について。結果は認定62件、否認4件、保留1件となり接種後死亡の一時金請求の審査はなかった。

 そんななか7月25日の分科会の審査では接種後死亡の一時金支払い請求を複数取り上げた。

 同日は12件が審査され、健康被害が認められた91歳女性以外の11件すべてを保留とした。このうち7件は死亡一時金と葬祭料、1件は死亡一時金の請求だった。一方これまで多かった医療費・医療手当の請求は3件と少なかった。11件のうち女性は6人、男性5人。接種時年齢は26~96歳だった。

 厚労省の担当者は91歳女性に死亡一時金が認められた理由について「請求時に提出された診療記録から予防接種後の症状が予防接種によるものであることが否定できないという点で審査した結果、急性アレルギー反応と急性心筋梗塞の因果関係が認定された」と言う。接種後死亡事例は同じ91歳女性で約30件報告されている。「接種直後の異変が決め手なのか」聞いたが、それに明確には答えなかった。

 また、今回の分科会で死亡一時金の審査が集中したことについては「審査は申請書が整ったものから順次行われており、たまたま」と説明した。

 しかし、新型コロナワクチン接種による健康被害の救済を求める声が大きく無視できなくなったからではないのか。

■請求受理件数は3680件

 ただ、多くの人が救済について勘違いしていると思われることがある。それは救済されるにはワクチンによる被害があったと考える当事者が市町村を通じて申請しなければならないことだ。

 それを厚生労働省の分科会が審査して健康被害と予防接種との因果関係を否定できない場合に限り医療費や障害年金、遺族年金、死亡一時金などが給付される。「申請なくして給付なし」だ。

 厚労省には他に「厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会(合同開催)」が開催され、予防接種法に基づく医療機関からの副反応疑い事例と薬機法に基づく製造販売業者からの副反応事例を調べている。1770件の接種後死亡事例等はそこでの数字だ。

 一方で、疾病・障害認定審査会の分科会は被害者の幅広い救済を目的としており、認定にあたっては、「厳密な医学的な因果関係までは必要とせず、接種後の症状が予防接種によって起こることを否定できない場合も対象」としている。

 なお、死亡一時金は予防接種を受けたことにより死亡した者の配偶者または同一生計の遺族に支給される。

 この日までの厚労省の請求受理件数は3680件。認定件数は850件、否認件数は62件。保留件数は16件となった。

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