高齢者の正しいクスリとの付き合い方

6種類以上のクスリで「ポリファーマーシー」に陥る危険あり

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 多剤、そしてポリファーマシーに至るのにはさまざまな理由があります。以前、「きちんとクスリを使っていない人はクスリが増えやすい」とお話ししたように、それも理由のひとつです。

 もうひとつ例を挙げると、腰が痛いので鎮痛薬を使う→鎮痛薬の副作用で足がむくんでしまったため利尿薬を追加→利尿薬の副作用で血液中の大事な成分が少なくなってしまったのでそれを補うための薬を追加……といった具合に、クスリの副作用が連鎖して多剤が進んでいく場合もあります。この流れを「処方カスケード」といい、すでに副作用が出ているのでポリファーマシーにも該当します。これでは、なんのためにクスリを使っているかわからなくなってしまいます。

 ポリファーマシーを防ぐにはいくつか対策がありますが、まずは「クスリを増やさないようにすること」が一番重要です。一方、クスリの中には、症状の改善とともにやめられるものもたくさんあります。痛み止め、かゆみ止め(アレルギー)、不眠のクスリなどがその代表的なものになります。自己判断でクスリをやめるのは絶対にダメですが、症状が改善したと感じたら医師や薬剤師と相談し、医師の指示の下でその症状に対して使っていたクスリをやめるというのはポリファーマシー対策になります。

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東敬一朗

東敬一朗

1976年、愛知県生まれの三重県育ち。摂南大学卒。金沢大学大学院修了。薬学博士。日本リハビリテーション栄養学会理事。日本臨床栄養代謝学会代議員。栄養サポートチーム専門療法士、老年薬学指導薬剤師など、栄養や高齢者の薬物療法に関する専門資格を取得。

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