認知症治療の第一人者が教える 元気な脳で天寿を全う

コロナ太りと認知症の意外な関係 リスク2倍アップの可能性も

重くなる前に体を動かすことが大事(C)日刊ゲンダイ

 糖尿病になると、インスリンの分泌や働きが悪くなります。食事をすると血糖値が上昇しますが、健康な人ではインスリンによってブドウ糖が細胞にエネルギー源として利用され、血糖値が元に戻ります。

 一方、インスリンの分泌や働きが悪い糖尿病の人は、ブドウ糖をうまく細胞に取り込めないため、血液中に糖があふれてしまいます。脳の神経細胞も糖をうまく利用できず、機能不全に陥ってしまいます。すると、神経ネットワークも含めてエネルギー不足になり、ダメージが起こりやすくなるのです。

 糖尿病が引き起こす脳の弊害はほかにもあります。インスリンの効き目が悪くなるとすい臓はインスリンをたくさん分泌しようとするのですが、それによってアミロイドβという、アルツハイマー病の原因物質が脳の神経細胞に沈着することがわかっています。

 糖尿病は動脈硬化を進行させます。つまり、血管が傷つきやすくなる。脳の血管も例外ではなく、脳卒中を起こしやすくなり、血管性認知症のリスクが上がります。

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新井平伊

新井平伊

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

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