五十肩を徹底解剖する

「石灰沈着性腱板炎」には消炎鎮痛剤 痛みが強いままなら内視鏡手術

写真はイメージ
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 腱板に石灰がたまることで、肩の痛みや運動制限が起こる「石灰沈着性腱板炎」は、レントゲンを撮れば、比較的容易に診断がつきます。

 たまった石灰は自然に吸収されることがあり、また、石灰が吸収されるタイミングで、激しい痛みが生じるといわれています。

 治療には、消炎鎮痛剤の内服がよく用いられます。また作用機序は不明ですが、消化性潰瘍の治療に使われるH2受容体拮抗薬の内服が、痛みと石灰の消失に効果があるとされています。

 ステロイド薬の注射もよく使われます。注射で石灰を含む腱板部分に穴を開け、石灰を腱板外に分散させて吸収を促し、ステロイド薬で消炎を図るのです。

 石灰の性状はさまざまです。体液の中に石灰の粒子が溶け込んだコロイド状のものの場合、注射時に吸引をかけると、サラサラとした白い石灰を抜き取れる場合があります。

 一方、石灰には大きくて硬いチョーク状のものもあります。この場合、吸収されず腱板に残って、肩の上げ下げ時の痛みが慢性化してしまいます。

 このように保存治療では日常生活に激しい支障をきたすケースでは、内視鏡手術という選択肢もあります。腱板を最小限に切開して、中の石灰をかき出すのです。石灰は確実になくなり、痛みの消失も良好。ただし完全な石灰摘出のため、腱板に断裂が残るので、最後に腱板修復を要することがあります。

 また、硬い石灰で、薬注射で難渋している患者さんの中には、「自費でもいいから、手術の前に何かほかの治療法はないか?」という方もいます。その場合、体外衝撃波療法という治療法があります。1980年に腎結石治療で臨床適応されましたが、石灰沈着性腱板炎においても、石灰巣の破砕と除痛に対し効果があるとの報告があります。

 ただし現時点では、石灰沈着性腱板炎への保険適用は認められておらず、自由診療(自己負担)であり、大学病院など限られた施設でしか行われていません。

安井謙二

安井謙二

東京女子医大整形外科で年間3000人超の肩関節疾患の診療と、約1500件の肩関節手術を経験する。現在は山手クリニック(東京・下北沢)など、東京、埼玉、神奈川の複数の医療機関で肩診療を行う。

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