がんと向き合い生きていく

転移がんが見つかってもどこからきたか分からない原発不明がん

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 Cさん(66歳・女性)は、某社の事務職員として長く勤務され、退職後の今はスーパーで週3日、経理の仕事をしています。健診は毎年受けていました。

 ある日、右腋窩に腫瘤を触れ、心配して来院されました。熱や痛みなどの症状はありません。診察してみると、たしかに親指の頭くらい(径約2.5センチ)の塊が硬く触れます。頚部、鼠径部など表在のリンパ節は触れません。右の乳がんからのリンパ節転移を疑いましたが、乳腺に腫瘤は触れません。乳腺超音波検査とマンモグラフィーでも特に異常はなく、また採血検査では、CEAなどの腫瘍マーカーに異常を認めませんでした。

 そこで、外科でリンパ節を切除し、病理検査を行いました。その結果、組織診断では「腺がん」とのことでした。ただ、乳がんでよく見られるホルモンレセプター(エストロゲン、プロゲステロン)は陰性、HER2(ハーツー)タンパク発現もなく、乳がんからの転移とは確定できませんでした。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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