血液型と病気

非O型はエコノミークラス症候群のリスクが2倍 25年間のデータで判明

非O型の(写真はイメージ)/(C)PIXTA

 2016年には、もっと大規模な研究がデンマークとスウェーデンの合同研究チームから発表されました。両国で1987年から2012年までに献血を行った人(延べ1360万人/年)の健康データを調査したところ、この間に917件の静脈血栓症(肺塞栓症を含む)があり、非O型のリスクは、深部静脈血栓症でO型の1.92倍、肺塞栓症で1.80倍でした。その他の研究も総合すると、非O型の肺塞栓症のリスクは、O型の1.5~2倍と見積もられます(深部静脈血栓症のリスクは約2倍)。

 肺塞栓症は、飛行機の狭いエコノミークラスで長時間座っていると起こりやすいことから、その俗称が付いています。東日本大震災では、クルマの中で寝泊まりしていた避難者に多く発生しました。避難先などでは、非O型の人はとくに意識して、体を動かしたり、水分を多く取ったりするべきです。

 しかし肺塞栓症がもっとも多いのは、実は医療現場かもしれません。とくにがんなどの大手術や、下肢の骨折のギプス固定などが、肺塞栓症の高リスク因子として知られています。そのため病院では、術後なるべく早く患者を立たせて歩かせる、弾性ストッキングをはかせて静脈の血流を活発にする、血栓予防薬を使うなどの対策が、ごく普通に行われています。今後は、患者の血液型も考慮した対策が、工夫されるようになるかもしれません。

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永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。

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