激しい運動をしたわけでもなく、緊張もしていないのに、胸がドキドキするとなんだか不安になるもの。年齢を重ねるにつれて、動悸(どうき)を引き起こしやすい要因が増えていきます。
加齢による全身の臓器の機能低下に伴って、心臓は生命を維持するために変化を来します。心臓の壁が厚くなったり、広がりにくくなったりするのです。また、血液の逆流を防ぐ大動脈弁や僧帽弁が変性して、正しく機能しない状態になることもあります。
これらの結果、心臓トラブルが起こって心機能が低下すると動悸が現れます。ほかにも老化に伴う高血圧、貧血、自律神経機能低下も動悸の原因になります。
中医学では、動悸の多くは「心」とよばれる臓器の機能低下によるものと考えます。心は血脈と血液循環機能をつかさどり、血を押し出し、全身に行きわたらせる働きがあります。また、思考や感情などの精神活動をコントロールする役割も果たしています。心の働きが弱まると、動悸、息切れや不安感、無気力、不眠といった不調が起きやすくなるのです。
心は暑さに弱く、夏にその機能が低下しがちです。この時季は、とくに心をケアする食養生を心がけましょう。
おすすめの食材はラッキョウです。中国では「薤白(がいはく)」の名前で生薬としても使用され、心に働きかけて動悸、不整脈、狭心症など心臓のトラブル改善に威力を発揮します。
また、血を巡らせる効果も高く、冷えや寒けを取り除く働きもあります。さらに血ばかりか気を巡らせる作用もあり、ストレス解消にも効果的。胃もたれ、腹部膨満感、吐き気の改善にも役立ちます。カレーの付け合わせとしてだけではなく、もっと活用したい「スーパーフード」なのです。 ラッキョウはさまざまな使い方が可能です。タマネギのイメージでカットして野菜と組み合わせてサラダにしたり、刺し身とあえてもおいしくいただけます。ピクルス感覚でサンドイッチに使ったり、刻んでマヨネーズに加えたものを肉や魚のソテーに使うのもおすすめです。
動悸を改善するラッキョウの効能を高めるためには、心の強化によいレンコン、卵、アサリなどと組み合わせるとよいでしょう。
■ラッキョウ高齢薬膳レシピ
ラッキョウと鶏肉、レンコンの甘酢炒め
心に作用するラッキョウとレンコンを組み合わせたレシピ。ラッキョウの漬け汁を調味料に使えば、味付けも簡単です。サクサクしたレンコンとラッキョウの食感、カレー粉、ソースのスパイシーな風味で食が進む一品。
【材料】2人分
●鶏むね肉 2分の1枚
●ラッキョウ甘酢漬け 10粒
●レンコン 150グラム
●A(しょうゆ、ラッキョウの甘酢、水=各大さじ1/カレー粉=少々)
●しょうゆ、片栗粉、ウスターソース 少々
●塩、コショウ、サラダ油、刻みネギ 適量
【作り方】
鶏むね肉はひと口大に切って、塩、コショウをしてしょうゆ、片栗粉を振って揉み込む。レンコンは薄切りにして酢水に漬けておき、ラッキョウは半分に切る。フライパンに油を熱し、鶏肉、レンコンを炒めて火が通ったらラッキョウ、混ぜ合わせたAを加えて炒め合わせる。最後にソースを加えて全体を混ぜ、器に盛り刻みネギをのせる。
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