認知症治療の第一人者が教える 元気な脳で天寿を全う

糖尿病・高血圧・脂質異常症は、なぜ脳にもダメージ与えるのか?

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 糖尿病、高血圧、脂質異常症の生活習慣病は、「2つ、ないし3つとも」という人が珍しくありません。もっと言うなら、肥満の人は、糖尿病、高血圧、脂質異常症の3つの生活習慣病を抱えている人が多い。その理由は、肥満は糖尿病の主なリスク因子であり、高血圧、脂質異常症の主なリスク因子でもあるからです。

 肥満になると、「TNF-α」「レジスチン」という物質の分泌量が増えます。これらは脂肪を蓄える白色脂肪細胞から分泌されるもの。TNF-αとレジスチンの量が増えると、血液中のブドウ糖が肝臓・筋肉・脂肪組織へと取り込まれにくくなり、血液中に糖が停滞して高血糖になります。糖は「酸化」などの化学反応から血管の内側の壁を傷つけ、血管にダメージを与える性質があるため、高血糖が続くと、動脈硬化が進行します。

 肥満は、血管を収縮させるアンジオテンシノーゲンという物質も増加させます。すると血圧が上昇し、血管の壁に負担をかけ、やはり動脈硬化の進行につながります。

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新井平伊

新井平伊

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

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