認知症治療の第一人者が教える 元気な脳で天寿を全う

糖尿病・高血圧・脂質異常症は、なぜ脳にもダメージ与えるのか?

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 しかし、糖尿病は「発症後10年以内なら、肥満を解消し肝臓と膵臓に蓄積した脂肪を減らすだけで、糖尿病が『治った』と同じ状態(=寛解)を維持できる」という発表があります。言い換えれば、早い段階で生活習慣を改善し、脂肪を減らさなければ、寛解が難しい。

 また、中高年の時に高血圧を放置していると、高齢になってから認知症になる確率が高まることがわかっています。

 さらに脂質異常症に関して、40~60代で高コレステロール血症(LDLコレステロール、いわゆる悪玉コレステロールが高い)になり、そのまま放置していると、アルツハイマー病になりやすいことが明らかになっています。高齢になってから脂質管理を始めても、認知機能の低下を防ぐ効果は得にくいとされているのです。認知症対策は、すなわち生活習慣病対策でもあるのです。

 とても長いスパンで考えるなら、「認知症のなりやすさ」、つまり体質が、親から子へと伝わっていくともいえます。

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新井平伊

新井平伊

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

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