がんと向き合い生きていく

ホコリがつく千羽鶴は白血病患者の病室には持ち込めないと言われ…

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 ある日の夕方、女子高生のS子さん(16歳)は、コーラス部での活動を終えてから同級生のAさんと一緒に帰路につきました。

 その途中、Aさんが急にしゃがみ込んで、めまいを訴えました。S子さんはスマホでAさんの母親に連絡し、そのまま近くの診療所にAさんを連れて行きました。そこでは、「貧血が原因だろう」と言われました。

 しかし翌日、あらためてAさんがC病院で診察を受けたところ、高度な貧血で「急性白血病」と診断され、2日後に入院することになったのです。

 S子さんは、この出来事について自宅で家族に話しました。すると、おばあちゃんからこんな提案がありました。

「かわいそうに……お気の毒だね。千羽鶴を作って、届けてあげたらどうだろう。早く治って欲しいね。鶴は千年、亀は万年だよ」

 さっそくその晩、S子さんはおばあちゃんに折り鶴の折り方を習いました。折り紙で2個、3個と鶴を作って、だんだん早く折れるようになりました。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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