がんと向き合い生きていく

ホコリがつく千羽鶴は白血病患者の病室には持ち込めないと言われ…

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 友達の思いが、みんなの願いが、届けられない……お母さんは残念に思いました。

 Aさんのお父さんは、「看護師さんが言っているのは当然のことだよ。Aが治ることが一番大事なんだから」と言います。そこでお母さんは、スマホで千羽鶴の写真を撮ってAさんに送りました。そしてS子さんに電話をかけて事情を説明し、千羽鶴はAさんが退院した時に渡す約束をしました。

■一時退院後の自宅でようやく手元に

 S子さんは、Aさんが千羽鶴と一緒に撮った写真を送ってくれるのではないかと期待していましたが、状況が状況です。Aさんの手元に千羽鶴は届かなくても、早くよくなってほしいと思いました。

 この話を聞いたS子さんのおばあちゃんはがくぜんとして、自分の思慮が足りなかったと後悔しました。若い頃、ビルの解体工事による風塵についての文献を調べたことがあったのを思い出したのです。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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