血液型と病気

非O型のフィブリン血栓脳梗塞リスクはO型の1.5~2.0倍

写真はイメージ
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 血栓症の代表は、急性心筋梗塞と脳梗塞です。しかしこれらの病気は、深部静脈血栓症や肺塞栓症より、プロセスが複雑です。

「フィブリン血栓」によるものと、「血小板血栓」が引き起こすものがあるからです。

 脳梗塞を起こすフィブリン血栓は、心臓の左心房で生じます。左心房の不整脈(心房細動)があると、血流が滞って心房の内壁にフィブリン血栓ができやすくなるのです。それがちぎれて左心室に移動し、大動脈を経て一気に全身に送り出されます。血栓が運悪く脳内の血管を塞いでしまうと脳梗塞の一種である「脳塞栓症」を引き起こします。心臓由来のフィブリン血栓は大きいことが多く、脳の太い動脈を塞いでしまうため、いままで元気だった人がいきなり意識を失って倒れるなど急激な症状が出ることがあり、致死率も高めです。

 血小板血栓は、動脈硬化が原因で生じます。動脈の内壁にできたプラーク(カサブタのようなもの)が、なにかの拍子に剥がれると、たちまち血小板が集まって凝集し、血栓を作ります。血小板だけの血栓はもろく崩れやすいため、大きな血栓はできにくいといわれています。

 ただし、血小板が凝集すると、それにつられて周辺のフィブリン分子が繊維を作って血栓を補強するため、ある程度は形と大きさが保たれます。

 血小板血栓による脳梗塞は、比較的細い血管が塞がれるため、症状がゆっくりで救命率が高く、また後遺症も比較的軽いといわれています。

 急性心筋梗塞については、冠動脈(心臓に酸素と栄養を供給する動脈)の動脈硬化、つまり血小板血栓が主な原因です。心臓の構造上、心房細動でできたフィブリン血栓は、冠動脈に紛れ込みにくくなっています。そのため、フィブリン血栓による急性心筋梗塞は少ないのです。

 ただし、心房細動が多くなると心臓全体の機能が低下し、心不全になりやすいといわれています。

 フィブリン血栓による脳梗塞は、当然ながら非O型に生じやすいと考えられます。また血小板血栓についても、フィブリンによる補強という点では、やはり非O型のほうが不利であると考えられます。

 実際、多数の研究によって、そのことが確認されています。最近の研究では、フィブリン血栓の脳梗塞は、非O型のリスクがO型の1.5~2.0倍、血小板血栓の脳梗塞については1.1~1.2倍、急性心筋梗塞は1.2倍ほど、リスクが高いとされています。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。

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