独白 愉快な“病人”たち

歌手の浜中よし子さんは帯状疱疹をきっかけに女優業を離れ…

浜中よし子さん(C)日刊ゲンダイ
浜中よし子さん(歌手/83歳)=帯状疱疹

 18~19歳の頃だから、今から64年も前のことよ。当時は「帯状疱疹」なんて名前はなかったと思うわ。でもその名前の通り、帯状にブワッと湿疹ができたのはよく覚えています。

 あれは、私が日活という映画製作会社にスカウトされて入って1年が経った頃でした。当時は日本映画の黄金期で、日活には石原裕次郎さんや小林旭さんといった大スターがたくさんいました。

 高校を卒業したばかりで右も左もわからない歌好き少女だった私でも、今日はこっち、明日はあっちと、バス移動で撮影所をめぐる毎日でした。スカウトしてくださったのが裕次郎さんを育てた有名プロデューサー・水の江滝子さんだったこともあり、期待に応えようと必死でした。もちろん全部端役ですよ。でも撮影は早朝だったり、深夜だったり時間がめちゃめちゃで、次第に疲労とストレスがたまっていきました。

 そしてある朝、右胸の先にポチッと赤く小さい水疱ができたのです。それが痛いんですよ。アッという間にその日の夕方には2センチぐらいの幅で背中の方までぶよぶよとした水疱が混じる赤い帯が広がっていました。

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