自宅看取りでは、こんな在宅医師やケアマネジャーと関わってはいけない

夜間や明け方などいつ何が起きるかわからない(写真はイメージ)
夜間や明け方などいつ何が起きるかわからない(写真はイメージ)/(C)日刊ゲンダイ

 前回、自宅で幸せな最期を迎えるためには、ちゃんとした在宅診療や相性の良いケアマネジャーを選ぶことが大切だが、現実にはそれが難しいことを説明した。では、理想の自宅看取りができる介護環境を整えるにはどのような心構えが必要か? 引き続き、年間200人超の自宅看取りを行う「しろひげ在宅診療所」(東京・江戸川区)の山中光茂院長に聞いた。

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「がんの終末期における在宅診療の選び方としては、『私は専門じゃないから病院で精査をしましょう』『私が着くまでに急変するとまずいから、救急搬送しましょう』というような医師がいるような医療機関はすぐに変えましょう。一見、誠実に見える言葉ですし、医師の言葉なので、家族としてはその言葉通りの行動をとってしまいかねません。その結果、医師は『家族が望んだから救急搬送した』などと言い訳をすることがあります。これなどは一見、医師としての誠実な行動に見え、家族の意向にも沿っているように思われますが、実際には家族の行動を『誘導』してしまっています」

 多くの「自宅で最期を迎えたい」という患者やその家族にとっては、たとえ患者の身にいろいろな変化が起こっても「病院に行きたくない」「病院に行こうとする介護労力も大変」という思いが土台にある。だからこそ、24時間365日の専門的なサポートができる在宅診療を選んでいる。ただ、現実には多くの在宅診療所は夜間をコールセンターにしたり、週に数回しか来ないバイトドクターに診療の中心を任せたりしている。結果、看取り率が60%以下のところも少なくなく、困ったら病院に戻す選択を「誘導」している。

「本来は、医師の側が看取りまでの時間軸について説明をし、そこまでの体の変化に合わせたしっかりとした緩和と延命を在宅でしていきながら、家族が心の整理をしながら『幸せな最期』につなげることが基本です。在宅診療を開始する際に、『家族として家で最期を迎えさせたい』という思いをしっかりと伝えること、そして、急変時に対する対応についても事前にしっかりと話し合い、心を定めておくことが必要です。在宅で、緩和という技術がない医師、そしてどんな急変時であっても冷静にその説明と対応を説明できない医師、救急車を呼ぶとしても現場に来てくれない医師などは絶対に選ばない、医師としての選択に委ねないという心構えが大事です」

■相性が悪ければ「介護人材」の途中変更も可能

 介護においても「自己選択」が重要だ。ケアマネジャーが「併設型」の場合、家族が「在宅でのサポート」「なるべく一緒にいたい」という希望があっても、「大変だと思うので施設にしましょう」「看護師を入れた方が楽ですよ」などと「介護の押し売り」になることもあるという。

「もちろん、状態に応じた施設介護や看護師、リハビリの導入などの選択肢を『提案』していくことは大切です。ただ、最後に選ぶのは家族です。選択肢の『正しさ』は、ケアマネジャーにとってだけの『正しさ』の場合があります。あるケアマネジャーが請け負う患者は、病状や家族の希望にかかわらず、必ず日中にはその同じ会社が運営するデイサービスを導入しているという場合があります。どんな環境選択を選ぶのか、どんな福祉用具が必要なのか、どんな性格の看護師やリハビリ、ヘルパーさんを選ぶのか、しっかりと患者やその家族が『自己選択』する必要があります」

 ケアマネジャーが選んだ「介護人材」を途中で変更することも可能だ。

「事業所とひも付きの訪問看護やヘルパーが相談なしに派遣されて、相性が悪い場合は違う事業所に変えてもらうことは決して失礼なことではありません。ケアマネジャーそのものと相性が悪い場合には、『地域包括支援センター』に相談に行きましょう。違うケアマネジャーを紹介してくれます。在宅診療の先生との相性が悪いと思えば、支えてくれる介護職種の人に『どこがいいですかね』と聞くと現場の目線から地域でしっかりと見てくれる医療機関を紹介してくれます」

 また、介護職種と相性が悪い場合には、在宅医に聞いてみると、「ここは親切でしっかり見てくれるよ」と誠実な介護職種を教えてくれるという。

 現場の思いを受け止められる医療機関や介護事業所の選択は、「有名さ」や医師の「高名さ」、規模の「大きさ」でなく、地域においての信頼を確認し、本人や家族との「コミュニケーションのとりやすさ」という相性を確認することが大切だ。

 かけがえのない大切な「最期の時間」はプロに任せるのではなく、自分たちで「選ぶ」という気持ちが必要なのだ。

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