Dr.中川 がんサバイバーの知恵

早期の大腸がんで良績 新たな内視鏡治療「ESD」の課題

検便で早期発見

 ESDは、内視鏡に装着した高周波ナイフでがんの周りの粘膜を切り、その下部にある粘膜下層を薄くはぎ取ることで、がんを切除します。内視鏡を扱う医師が、切除する範囲や形を思い通りに決められるため、2センチ以上の病変を切除することができるのです。

 今回、国立がん研究センターなどのグループは2013年から2年間、ESDを受けた1883人を登録。その結果、5年生存率は93.6%。8人(0.5%)に再発が認められましたが、いずれも内視鏡で切除できています。従来の内視鏡に比べてESDは、がんの取り残しが少なく、再発リスクも低いことが明らかになったのです。

 大腸の壁は2~3ミリと胃の半分ほどの薄さ。ちょっとした操作ミスが、出血や穿孔(せんこう)につながりますから、そこを薄くはぐのは高い技術が必要なのです。

 今回の研究では穿孔が2.9%、出血が2.6%に認められたものの、多くはそのときの追加処置で対処できていて、外科手術が必要だったのは0.5%でした。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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