老親・家族 在宅での看取り方

予後宣告は3カ月…自宅で思う存分の「口げんか」すら愛おしい

写真はイメージ

 最近になって在宅医療を開始した80歳の男性で、前縦隔扁平上皮と縦隔リンパ節、さらに肝臓の進行がん末期の患者さんがいます。

 これまでなんとか車椅子で通院をしていたのですが、少し前から息切れをするようになり、院内での独歩も怪しく、在宅医療を開始されました。病院からの申し送りによれば予後3カ月。自宅に戻られてからは、終日布団の上で過ごしながら、トイレなどは辛うじて自力でできているとのこと。

 奥さまがこっそり私に言いました。

「実は、あの人を自宅で見るのは不安だったの」

 元板前さんだという旦那さんは職人気質。頑固で気の強いところがあり、日頃から奥さまとの間で口げんかが絶えず、随分と苦労された経験から、そんな旦那を果たして介護することができるのかという思いだったといいます。

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下山祐人

下山祐人

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

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