実際に在宅医療を開始早々、患者さんのお兄さんが我慢できずに、2人に激しく意見する場面に遭遇することになります。
「夫婦の会話でお互いカッカして大変なんですよ、先生。おまえも少し病人らしくしなさいっての、そしてあんただってもっと病人に優しくしなさいって。なんのために60年間一緒にいたんだよ、いい加減にしろ、そんなこと言って」
「もう私だめ、こんなにつらいことできない」
そう言って部屋を飛び出していく奥さまを尻目に、旦那さんは布団をかぶってただ黙っているのみで、私もどうすればいいのか困惑したことを覚えています。
後から聞いたことですが、当初、患者さん自身が奥さまの苦労を考えて入院も考えたそうです。しかし予後宣告を3カ月とされ、残された時間を自宅で過ごしたいという思いが高まり、延命措置も断って自宅で最期まで過ごすことを選ばれたのでした。
老親・家族 在宅での看取り方